ピンクに光る夜名所

愛媛県外から来たお客様に「松山の観光ってどこかおすすめありますか。」と聞かれることがあります。

お、これは愛媛在住者の腕の見せ所。
満足させまっせと張り切って、ひとまず聞き返します。

「どこか回られました?」

すると道後温泉、松山城、坊っちゃん列車、ロープウェイ街、坂の上の雲ミュージアム…。
聞く限り完璧なリスト。
有名どころは全部行っている。
むしろ私が行ったことない場所まで行っている。

そうなると途端に語彙が失われます。

回答を絞りだした末に「松山はのんびりした空気感が魅力なので、ぜひそれを思う存分味わってくださいね!」と。
空気感とは何か。観光地の説明として最弱。

そのたびに、相手の表情にほんのり「期待外れだな」という影が落ちるのを感じていました。

 

そんな敗北を繰り返す中、ついに、この度、私は見つけてしまったんです。

愛媛県松山市の名所を。

しかも夜限定で現れる名所を。

これはさすがに愛媛県外の人には知られていないだろう名所を。

それがこちら。

『ピンクに光る愛媛県庁』です。

近づいてもイベントの気配はない。
人影もない。音楽もない。
建物だけがピンクに燃えている。
何でもないただの平日。
初めて見た時はこの妖しさに混乱しました。

説明がないピンクほど、こちらの感情が迷子になるものはありません。
せめて愛媛らしく、みかん色ならまだ何となく理解できるのに。県がこんな攻めた色を夜に浴びせていいのか。

庁舎は県が管理している建物だから、このライトアップの財源はおそらく税金。
それならなおさら、みかん色であって欲しかった。血税が夜になるとピンクの光に変わる県ってどうなのかと、軽く頭を抱えました。

どうかライトアップの色が日替わりで、今日がたまたまピンクの日というだけであってくれと願い、翌日も見に行ってみます。やっぱりピンクのまま。さらに頭を抱えます。

いったい何を伝えたいのか。県民にどんなメッセージを送ろうとしているのか。

 

どうしても理由が気になり過ぎて調べてみたら、意外な事実が出てきました。

どうやらあのピンクは「乳がん月間」のライトアップだったそう。
乳がん検診の大切さを広める「ピンクリボン運動」の一環。

しっかり意味がある、とっても大切な啓発です。
申し訳ございませんと県庁に心の中で謝ります。

理由が分かった途端、県庁の光が尊く見える。
意図のあるピンクには芯がある。
何も恥ずべきことはない。恥ずべきは私の無知のみ。大切な光。

 

というわけで、今後お客様から松山の観光について聞かれたら堂々とこう答えるようにします。

「夜、県庁を見てください。ピンクに光ってるんですよ。」

説明できる名所があると、やっぱり誇らしい。

投稿者

おとわ
おとわ
好きなセルフケアは爪もみです。